わずか4館の上映から、すでに50館での上映が決まっている映画「判決、ふたつの希望」。
社会派ヒューマンドラマとして、軒並み高評価レビューを獲得しています。
すでに、今年一番の映画!という声もあり、う〜ん、観たい!
とはいえ、中東、レバノンはよく知らない地域。
社会的・歴史的背景の知識0で、果たして楽しめるでしょうか?
観た人の感想を読む限り、前知識なしでも楽しめたけど、もう少し勉強してから観た方が良さそうです。
ネタバレにならない程度に、映画のあらすじと、レバノンについてこれだけ抑えておきたい背景をまとめました。
(トップ画像:https://eiga.com/movie/88760/special/)
「判決、ふたつの希望」あらすじ
レバノンの首都ベイルート。
その一角で住宅の補修作業を行っていたパレスチナ人の現場監督ヤーセルと、キリスト教徒のレバノン人男性トニーが、アパートのバルコニーからの水漏れをめぐって諍いを起こす。
このときヤーセルがふと漏らした悪態はトニーの猛烈な怒りを買い、ヤーセルもまたトニーのタブーに触れる “ある一言”に尊厳を深く傷つけられ、ふたりの対立は法廷へ持ち込まれる。
やがて両者の弁護士が激烈な論戦を繰り広げるなか、この裁判に飛びついたメディアが両陣営の衝突を大々的に報じたことから裁判は巨大な政治問題を引き起こす。
かくして、水漏れをめぐる“ささいな口論”から始まった小さな事件は、レバノン全土を震撼させる騒乱へと発展していくのだった……。
原題 「L`insulte」。意味は、侮辱。
英語だと「THE INSULT 」
2018年8月31日、日本公開。
2017年べネチア国際映画祭、最優秀男優賞を受賞(カメル・エル=バシャ)。
2018年アカデミー賞外国語映画賞にノミネート。
レバノン映画では史上初。
監督は、レバノン出身。
ジアド・ドゥエイリ監督。
タランティーノ監督のカメラアシスタントをしていた経歴を持ちます。
「レザボア・ドッグス」や「パルプ・ フィクション」の撮影に参加していました。
監督作品としては
1998年公開の「西ベイルート」。
「Lila Says」「The Attack」は日本未公開です。
「判決、ふたつの希望」は監督の実体験を元に作られたそうです。
原題の「侮辱」とかけ離れた邦題がつけられました。
はたして、邦題の意味する希望二つ、何を意味するのでしょうか…
レバノン映画を観る前に、知っておきたい歴史背景
まず、レバノン共和国は中東にあります。
フランスの支配下にあった歴史から、
イスラム圏にあってキリスト教徒が多い珍しい国です。
イスラム教が55%、キリスト教が40%くらい。
隣国に、イスラエルが南側、北から東にシリアがあります。
パレスチナ問題は、非常にややこしいです。
ざっくり書きますと
イスラエル(ユダヤ人)がローマ帝国によって追い出され、散り散りになる。
各地で金融で稼ぐ。(根ざした土地がないため、農業など産業ができなかった。)
イスラエルがあった地域に、アラブ人が住み着く。(パレスチナという地域名になる。)
オスマン・トルコがパレスチナを占領・支配。
第一次大戦中、イギリスがオスマン・トルコからの独立支援を条件に、アラブ人にトルコと戦わせる。
一方、パレスチナにユダヤ人の国を作ると約束し、ユダヤ人から戦争資金を集める。
戦争終了後、アラブ人とユダヤ人が自分の国だとパレスチナで対立。
ここに、キリスト教対イスラム教が絡み、問題はさらに複雑。
紛争が続き、虐殺・迫害・報復の連鎖が起きた歴史を持ちます。
今では、パレスチナ難民が安い労働力として搾取されている社会背景があります。
映画の中では、
レバノン国内に住むキリスト教の男と、
パレスチナ人の対立にレバノン全土が巻き込まれることになります。
人種・宗教・社会的立場の違い。
小さな波も大きくする、何かがあるんですよ。
こういうテーマの映画は、
ほぼ同一民族で構成されている日本人だからこそ、観ておきたいと思います。
映画を観た人たちの感想ツィート(ネタバレなし)
「判決、ふたつの希望」国粋主義的なレバノン人とパレスチナ難民の男性の話だけど、法廷劇としても社会派ドラマとしても素晴らしかったな。個人的には、いかに自分の考えている正義ってものが、もろくて危ういものかってことを考えさせられる作品だったよ。
— rino5150 (@rino5150) 2018年9月4日
判決、ふたつの希望 一点のみ ストーリー・構成 些細な出来事からの話の膨らませ方が非常に上手い 去年確か俺ドリーム試写会で観た時に「バランス感覚が良い」と評した記憶あるんですけど、ドリームとはまた違った方向でのバランスの取り方が上手い→
— DICE-K (@over_die) 2018年9月4日
「判決、ふたつの希望」を観賞。二人が裁判を通じて過去の歴史に、自らの人生に向き合う姿がリアルに描かれています。対立してきた民族の和解と友好とは、深く考えさせられました。レバノンの歴史に通じていなくても見応えある作品です。https://t.co/2tGKjcMLCl
— 岡崎ゆたか (@info_okazaki) 2018年9月4日
判決、ふたつの希望鑑賞終了 とりあえず感想 ストーリー自体は大体粗筋通りなので割愛 洗練された脚本と役者さんの演技、カットワークが光る一級品 文句無く今年ベスト級 よくこれを113分に纏めたもんだなと 一度理性のタガが外れた二人が招く思想信条のもつれ これは一見の価値あり
— DICE-K (@over_die) 2018年9月4日
判決、ふたつの希望。
昨日見たけどなかなか見応えがあった。個人間の口喧嘩がレバノン全土を揺るがす政治争いに発展していく様子が生々しく表現されてて面白い! pic.twitter.com/XMMkj9Abv8— ????沖太郎 (@okitaro1201) 2018年9月4日
判決、ふたつの希望を見た後に、監督のインタビューを読んで主人公のトニーの性格が自己中心的な感じがしたのに納得がいった。宗教や民族、難民問題の根っ子の部分が、外から見てる人にも可視化されてるんだけど、実際にはもっと複雑なんだろうな。裁判官から平等な精神を感じられるのは良かったな。
— せりな???? (@serina221b) 2018年9月4日
『判決、ふたつの希望』、自分は春頃に覆面試写で鑑賞したので感想を呟けなかったけど、間違いなく今年ベスト級の傑作だと思います。誰しもの心に張られた「許容」の境界線を巡る、緊迫感溢れるドラマ。また近年、長尺のTVシリーズに押され気味な2時間枠の「法廷映画」としても、出色の出来だと思う。 pic.twitter.com/2XhKSl7vmQ
— takeman75 (@takeman75) 2018年9月4日
まだ、上映館は都会に限られています。
早く、地方でも上映決まりますように…