ウルグアイの元大統領、ムヒカさんが来日され、日本中が注目していますね。
「世界一貧しい大統領」と、清貧がクローズアップされています。
しかし、彼は一国の大統領を務めた政治家です。
政治哲学と実績、それが生み出された背景を知ることで、そこから学べることが大事だと思います。
そして、ムヒカ大統領が日本に関心を持っている、その理由を知って、また考えるところがありました。
(トップ画像:https://www.youtube.com/watch?v=1B0QGOtSfMc)
ムヒカ大統領の持つ日本人のイメージ
ムヒカ大統領は幼少期に、日本人との交流がありました。
彼は貧しい家に生まれ、幼少期に花を売り生計を助けていました。
売る花を栽培し始めたきっかけが、近所に住んでいた日本人家族だったそうです。
10~15軒の日本人家族が家の近所に住んでおり、彼ら花の栽培を教わりました。
彼らは、真面目で土に根差して生きる日本人のイメージを、幼少のムヒカ大統領に抱かせました。
その後、20代のムヒカ大統領は極左都市ゲリラ「ツパマロス」に加入。
腐敗する権力に戦いを挑み、数々の襲撃事件に加わり戦いました。
6発の銃弾を浴び、4度の投獄、2年以上井戸の底に閉じ込められ、2度の脱獄を経て、13年間の牢獄生活を送ったそうです。
今のイメージからは信じられません。
当時の自分を振り返り、ムヒカ大統領はこう言っていました。
「50年前の私たちは富を平等に分配することによって世界をより良くできると考えていたんだ。
でも、今になって気付いたのは、人間の文化そのものを変えないと何も変わらないということだ」
(引用:2015年放送「Mr.サンデー拡大スペシャル」)
極端な思想では、世界は平和にならない。
そう気づいたムヒカ大統領は、再び日本人と出会うことになります。
「ここには日本の造船会社が来ていてね。日本人技術者が大勢働いていたんだ。その子どもたちはここで成長し、自転車で学校へ通い、ここでサッカーを覚えたんだ。
ある日、日本人の子どもが試合に出ていてね。激しいプレーで頭をけがして血を流してた。ついにはコートから出された。その子は泣いていたよ。でも傷が痛いからじゃない。最後までプレーできないことが悔しくて、名誉心で泣いていたんだ」
名誉とは何ですか?(ディレクター)
「任務を最後まで全うするということかな。自分が引き受けたスポーツでの任務をね。君たちの文化(日本)ではとても大切なことだろう?」(引用:2015年放送「Mr.サンデー拡大スペシャル」)
その頃から、日本文化へ関心を強く持ったムヒカ大統領。
彼の人生は、政治の道へと進んでいきます。
1985年に立憲民主制が復活した後、ツパマロスと共に左派政党「 Movement of Popular Participation」を結成。
1994年の選挙で議員に初当選。
2009年に大統領選挙に立候補し当選、2010年3月から大統領となりました。
2012年のリオのスピーチをきっかけに、「世界一貧しい大統領」として世界の注目を浴びます。
彼は清貧を貫く大統領としてだけでなく、ウルグアイも変えていきました。
政治的には中道左派で、同性婚と人工妊娠中絶手術の合法化を実施。
麻薬組織撲滅を目指し、医療用とレクリエーション用の大麻の使用、生産、売買を世界で初めて合法化したのです。
それと同時に、貧困層を無くすことに力を注ぎました。
そして、2015年3月1日に、大統領としてその任期を終えました。
国民から愛され、惜しまれの退任でした。
ムヒカ大統領は、なぜ大統領官邸に住まないのか?と問われたとき
「大統領官邸に住んで42人の職員を雇うぐらいなら、学校のために経費を使いたいので、住まない」
専用機も使わず、世界会議にはエコノミークラスで移動。
もしくは、他の大統領機に相乗りするという倹約家。
その分のお金で、学校を作ったりしていました。
ムヒカ大統領が、今の日本について聞かれたインタビューでの言葉です。
「ペリー提督がまだ扉を閉ざしていたころの日本を訪れた時の話さ。時の日本は『西洋人は泥棒』って思っていた時代だね。あれは間違いではなかったけど、賢い政策で対応したとは思うよ。
西洋にある進んだ技術に対抗できないことを認め、彼らに勝る技術をつくろうと頑張ったんだ。そしてそれを成し遂げてしまった。
でも、そのとき日本人は魂を失ってしまったんだ」
「産業社会に振り回されていると思うよ。すごい進歩を遂げた国だとは思う。
けど、本当に日本人が幸せなのかは疑問なんだ。
西洋の悪いところをマネして、日本の性質を忘れてしまったんだと思う。日本文化の根源をね」
(引用:2015年放送「Mr.サンデー拡大スペシャル」)
耳が痛い言葉です。
ムヒカ大統領は、徹底的に消費社会を敵視していました。
「私は、消費主義を敵視しています。
現代の超消費主義のおかげで、私たちは最も肝心なことを忘れてしまい、人としての能力を、人類の幸福とはほとんど関係がないことに無駄使いしているのです」
「西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を、世界の70億~80億人の人達ができるほどの原料が、この地球にあるのでしょうか?」
「人は物を買う時は、お金で買っていないのです。
そのお金を貯めるための人生の裂いた時間で買っているのですよ。
従って人を雇っている場合、その人の時間で物を買っていることになるのです。
済資源というのはそういう人生の時間を裂いたものから出来ているのです。」
言うことも、行動も、型破りな大統領でした。
過激な発言もあります。
今までで一番正直な大統領だと、ウルグアイ国民が言っていたのが印象的です。
政治家は、正直ではないものだと思っている国民ですから・・・。
そんなムヒカ大統領の半生は、早くも映画化が決まっています。
かつての南アフリカ大統領 ネルソン・マンデラさんを描いた「インビクタス/負けざる者たち」ように、素晴らしい映画になることを期待してます!
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