芥川賞『コンビニ人間』の感想!日常に溶け込むサイコパスの苦労を描いた話か?

なぜ、この作家さんを今まで知らないでいたのだろう?

芥川賞受賞作ということで「コンビニ人間」を読んでみて、驚きました。

面白いじゃないか!

リアルなコンビニ従業員あるあるで、親しみやすく、読みやすい。

でも、内容はとってもサイコパス!

しかし、分かるよ、現代社会ってそういうところが生きにくいよね!

っていう共感も引き出しながら、テンポよく1時間でサラッと読了。

忘れないうちに、感想文をしたためておきます。

(以降、激しくネタバレを含みますので、読書前に読むことはおススメできません。)

 

『コンビニ人間』主人公の女性に共感!読んだ感想!

『コンビニ人間』の主人公、古倉恵子は36歳の独身女性。

結婚も就職もせず、大学時代からひたすらコンビニでアルバイトを続けてきた。

勤続年数アルバイトなのに18年。

でも、問題なのはそんなことではない。

 

彼女は子供の頃から、普通の人とは思考が違ったのだ。

よく言えば、合理的な考え方をする。

悪く言えば、目的のために最速の手段を選ぶ、サイコパス

 

例えば、ケンカをしてうるさく騒いでいる男子がいるとする。

静かにしてほしいと思っている女子たちは、仲裁するなり、先生を呼ぶなり考え、その中で実行できそうな選択肢を選びだす。

しかし、彼女は静かにするための最速の方法を選ぶ。

頭を鈍器で殴り、物理的に黙らす、だ。

結果、ケンカは止まり、求めていた静寂は手に入る。

実に、合理的。

 

そんな考え方をする人間ならば、きっと家庭環境に異常があるのだと周囲の人間は考える。

虐待されているのかもしれない、

何か心にトラウマがあるのかもしれない、

でも、彼女には何もなかった。

生まれつき、そういう思考なのだ。

 

家族はそれをほっておいたわけでもなく、むしろ懸命に「治そう」としていた。

そこで彼女は自覚する、「自分は欠陥人間」であると。

そんな彼女の処世術は、やはり合理的。

必要以上のことは喋らない、指示されてないことはしない。

判断は周囲の人間をよく見て、彼らの真似をすることで、普通の人間のように振る舞う方法をとってきた。

 

そんな、古倉恵子が最も生きやすい場所が、コンビニだったのだ。

マニュアル通り、いつも通り。

人や客、商品が入れ替わっても、コンビニの本質は変わらない。

24時間365日、どこに行っても同じクオリティだ。

それを可能にしているのが、マニュアル。

 

マニュアルに沿って対応できる、使える人間は重宝される。

それが、コンビニ。

人によって多少のムラがあるが、基本的にマニュアル通り仕事すれば、大きな差が生じない。

悪く言えば、誰がやっても同じ仕事である。

そこで、やっと普通の人間として生きられるコンビニ人間。

 

しかし、時間の経過は残酷ですね。

20代ならそれも許されてきた。

しかし、社会は異質な存在を排除したがる。

 

『コンビニ人間』古倉恵子も、30代後半になり、コンビニ人間で居続けることが難しくなってきました。

というより、コンビニで働いている時間以外の時間の過ごし方に、問題が出てきていました。

女性なら、必ず言われる「結婚しないの?」

その言い訳も、36歳で、アルバイト18年間の女性は、いろいろ限界がきつつある。

私、精神的におかしいから。そういう訳にはいかないのだ。

 

どうして、世の中の人は他人の人生に口を出したがるのだろうか?

友達だから?家族だから?

自分の人生だけに一生懸命になってればいいのに、うっとうしい。

私のことはほっておいて。

1人でだって、仕事をして、収入を得て、食事して、寝て、生きていける。

ただ、生きるだけなら。

本当に、人とのコミュニケーションが煩わしい。マニュアルがないから。

指示さえされれば、どんな正解だって実行できるのに・・・。

 

彼女のその辺には、共感してしまいました。

決して、一人で生きているわけじゃない。

分かっているけど、みんな親切で言ってくれてる、それが分かっていても、うっとうしい。

そういう時ってありますよね。

特に、女性のグループ交流みたいなの。

楽しい一面もあるけれど、価値観の押し付け合いみたいなところもあり、面倒・・・。

 

さて、そんな主人公・古倉の人生に投じられた、一つの石。

社会不適合者、白羽という男が登場します。

彼は社会に対し不満不平をいいながら、結局その社会で上手くいっている人間に憧れ、妬み、理想ばかり高い。

自分も底辺の人間でありながら、底辺の人間だと古倉たちを蔑む、支離滅裂ながらも、分かりやすいキャラクターです。

合理的で機械的な印象の主人公に対し、とても人間っぽい。

そして、世の中の大半の人が大嫌いなタイプ。キモい男です。

 

彼との何の得にもならないような会話を通しながら、彼女は選択を間違えます。

関わらないのが一番いいのにね。

その成り行きを、極めて自然にもってくるストーリー構成に、作家さんの実力を感じます。

 

結果、彼女は自分のアイデンティティである「コンビニ」という環境を、自ら破壊してしまう。

壊れた彼女の生活、そこから得られた結論は

コンビニでしか生きられない、コンビニこそが唯一のアイデンティティを保っていられる場所という気づきでした。

最初から分かっていたのに。

コンビニ人間が、コンビニを壊し、コンビニに帰る。

その流れが、何一つ無理のない自然の流れで、素晴らしく面白かったです。

サイコパスで合理的に考え、食べ物は加熱して摂取するだけのような人間でも、(社会的にではなく自分が生きる方法として)間違った選択をするものだなぁ、と。

 

と、同時に、他人の考えなんて、私たちは全く分かりあえていないんだよ、ってことをつきつけられました。

彼女はお客さんのしぐさを見て、望むものを差し出せる。

傍から見れば、すごく良い人。

でも、心は欠陥品。

ただ、しぐさから合理的に判断しているだけで、親切心の欠片もないという。

世の中、そんなもんです。

こっちが勝手に勘違いして、浮かれて生きているだけ。

でも、それしか方法ないし、真実(他人の真意)なんて、いちいち分かったら大変だと思うから、それでいいんでしょうね。

 

そんなことを考えさせてくれる、面白い小説でした。

短めで、小刻みな文章はテンポよく、さらっと1時間程度で読めるので、午後の読書におススメです!

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